家中が快適な室温になる全館空調は、多くの方が魅力に感じる設備ですよね。
しかし、中には「全館空調はやめたほうがいい」とネガティブな意見を見かけることがあります。
全館空調にはどのようなデメリットや注意点があるのでしょうか。
そこで今回は、全館空調はやめたほうがいいと言われる理由と対策をご紹介します。
全館空調のメリットや採用して後悔しないためのポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
<コラムのポイント>
- 全館空調とは、冷暖房された空気を循環させて、部屋ごとの温度差が少ない家にするシステムのことです。
- 故障時のリスクやコスト面、メンテナンス性などが「全館空調はやめたほうがいい」理由として挙げられます。
- 全館空調のデメリットは対策することが可能なため、施工実績が多い住宅会社への相談がおすすめです。
全館空調とは
全館空調とは、家全体の空気を循環させる空調システムのことです。
一般的な住宅では、玄関・トイレ・洗面所・廊下などには空調設備をつけないことが多いため、空間ごとに温度差ができてしまいます。
対して、全館空調がある住まいなら冷暖房された空気が家中を循環するため、温度差が少ない快適な環境をつくりやすいです。
全館空調はやめたほうがいい8つの理由(デメリット)と対策
全館空調はやめたほうがいいという意見を見かけることがあります。
否定的な意見がある理由やデメリット、対策をご紹介します。
①故障すると家全体が冷暖房できなくなる
全館空調は大きな1つの機械で家中を冷暖房する仕組みのため、故障すると家全体が冷暖房できなくなってしまいます。
真夏や真冬に故障すると、かなり暮らしに影響するため、全館空調はやめたほうがいいと言われるケースも少なくありません。
また、空調と換気が連動している全館空調の場合、故障するとどちらの機能も働かなくなります。
住宅会社に故障した際の対応を事前に確認しておくことが大切です。
また、部品や空調設備の取り換えのしやすさによっても故障時の大変さは変わりますので、修理方法や費用を踏まえた商品選びをしましょう。
②人によっては暖かく(涼しく)感じられないから
全館空調を採用しても人によっては暖かさ(涼しさ)を感じられず、やめればよかったと感じる方もいます。
年齢や性別、体格などによって温度の感じ方は異なるため、家族内でも意見が分かれることも少なくありません。
全館空調は推奨されている温度設定にして、暑がりや寒がりの家族がいる部屋には補助的な冷暖房器具を取り入れるなど、家族全員が快適に感じられるよう対策しましょう。
③導入コストが高いから
導入コストの高さが理由でやめたほうがいいと言われることもあります。
確かに、全館空調の導入コストは安くありませんが、個別エアコンの場合も数やグレードによって金額が異なるためケースバイケースです。
また、家中冷暖房できて快適な暮らしが送れるため、コスト面でのデメリット以上にメリットを感じて全館空調を採用する方もたくさんいます。
費用対効果を考えながら、全館空調の採用を検討してみましょう。
④個別エアコンと比べて電気代が高くなるから
全館空調は、ランニングコストが高くなるのでやめたほうがいいと言われることもあります。
家全体を冷暖房するために、全館空調は常にエネルギーを使うことには違いありません。
しかし、個別エアコンと比べて必ず電気代が高くなるとは限らず、ケースバイケースです。
例えば、個別エアコンで各居室を急速に冷暖房すると、多くのエネルギーを消耗します。
対して、弱運転でずっと冷暖房し続けている全館空調の方が、トータルのエネルギー消費は少なくなる事例も多いです。
これまで全館空調を採用したお宅の電気代を住宅会社に見せてもらうなど、よりリアルな光熱費を把握してから採用を決めましょう。
⑤常に空調をつけておくと空気が乾燥するから
全館空調は常に冷暖房設備から出る風を循環させておく仕組みです。
そのため、冬場は室内の空気が乾燥しやすいというデメリットがあります。
加湿器を併用したり、調湿機能を持った自然素材を採用するなどの工夫を取り入れましょう。
⑥ダクト内の掃除ができないから
全館空調は機械と各空間をダクトでつなぐことで、効率的に適温の空気を循環させることが可能です。
しかし、ダクト内の掃除ができないため、全館空調はやめたほうがいいとの意見もあります。
基本的にダクト内を通る空気はフィルターを通して取り入れられているため、極端に汚れる可能性は低いです。
しかし、長年の使用によって多少の汚れは付着することが想定できるため、定期的な点検やお手入れをしてくれる住宅会社を選びましょう。
⑦修理や交換、メンテナンス費用がかかるから
全館空調の機械は大型のため、修理や交換、メンテナンスの費用がかかりやすい点もデメリットです。
もちろん、一般的なエアコンも故障による修理や交換は必要になります。
しかし、家中のエアコンが一気に壊れる確率は低いため、出費を分散させることが可能です。
全館空調を採用する場合は、修理や交換の費用が一度にかかるため、計画的に貯蓄して万が一の事態に備えておきましょう。
住宅会社にメンテンナンスの時期や費用をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
⑧カビの発生リスクが上がるから
全館空調を採用すると結露が起こりやすくなり、カビの発生リスクが上がるのでやめたほうがいいという意見もあります。
基本的に全館空調を採用しても、適切な使用方法ならカビが発生することは考えにくいです。
しかし、夏場の設定温度を下げすぎてダクト内が冷えると周囲と温度差ができ、結露が発生してカビが生える可能性はあります。
全館空調を採用する場合は、住宅会社が推奨する使い方を守ることが大切です。
また、高気密・高断熱な家づくりをして、ダクト内と建物内の温度差が生まれにくいようにしている住宅会社を選びましょう。
マイホームに全館空調を採用するメリット
マイホームに全館空調を採用するメリットをご紹介します。
ここまでデメリットばかりお伝えしていましたが、全館空調にはたくさんの魅力がありますので、改めて確認してみてくださいね。
①家全体が快適な温度に保たれる
全館空調を採用することで、家全体が快適な温度に保たれます。
家のどこにいても夏は涼しくて冬は暖かいため、温度によるストレスが無い状態で生活できます。
寒い冬の朝でも布団から出やすく、お風呂に入るまでに凍えることもありません。
夏場も汗だくでトイレや洗面所にいる必要がなく、快適な暮らしが送れます。
住まいの快適性を高めたい方に全館空調はおすすめです。
②ヒートショックや熱中症のリスクが軽減できる
全館空調を採用することで、ヒートショックや熱中症の発症リスクを軽減させることができます。
ヒートショックは、脱衣所と浴室の温度差の違いが原因となるケースが多いですが、全館空調の住まいなら身体に負担がかかりません。
また、夏場でも常に快適な室温の家で暮らしていれば、熱中症対策にもなります。
全館空調は快適性だけでなく、住む人の健康状態にも好影響をもたらす点は大きなメリットです。
③内装のデザイン性が高まる
全館空調は、メインの機械が収納内や天井裏、床下などに設置されるケースがほとんどです。
大きな機械が室内に露出しないため、内装のデザイン性が高まります。
通常ならエアコンをつける場所に、インテリアやアクセントウォールを採用できるなど、コーディネートの幅が広がる点もうれしいポイントです。
④開放的な間取りを採用しやすい
全館空調は効率的に空気を循環させることで、より効果を実感できるシステムです。
そのため、次のような空間のつながりがある間取りの方が、温度差のない住まいをつくりやすくなります。
- 1階と2階がつながる大きな吹き抜け
- 壁や扉がない大空間
- 廊下なしで各空間がつながる間取り
個別エアコンの場合、吹き抜けなどの間取りを採用すると冷暖房効率が悪くなるケースが多いです。
開放的な間取りを取り入れたい方は、全館空調も併せて検討してみましょう。
⑤使い方によっては光熱費を抑えられる
デメリットでもご紹介しましたが、全館空調は使い方次第では光熱費を抑えることができます。
なぜなら、24時間ずっと省エネ運転ができるため、急激に冷暖房する方法と比べて電気を消費しないからです。
適切な使用方法や温度設定を住宅会社に確認し、快適でお財布にも優しい住まいを実現しましょう。
全館空調を採用して後悔しないためのポイント
全館空調を採用して後悔しないためのポイントをご紹介します。
イニシャルコスト・ランニングコストを理解する
全館空調は住宅会社が採用している商品によって、イニシャルコストやランニングコストが大きく異なります。
システムの導入費だけでなく、入居後の光熱費やメンテナンス費用なども把握しておくことが大切です。
また、大規模な修理や交換が必要になった際のコストも確認しておき、万が一に備えておくことをおすすめします。
メンテナンスの方法を実物を見て確認する
全館空調は、一般的なエアコンとメンテナンス方法が大きく異なります。
換気設備のフィルター清掃や住宅会社による点検が必要なケースがほとんどです。
資料での説明のみで進めてしまうと、入居後に「思ったよりメンテナンスが大変」と後悔するかもしれません。
実際に全館空調が採用された家などを見せてもらい、メンテナンスの方法を体感することをおすすめします。
高効率な熱交換型第一種換気システムを採用する
高効率な「熱交換型第一種換気システム」と全館空調を組み合わせることで、より温度差のない空間をつくりやすくなります。
熱交換型第一種換気システムとは、屋外に出る前の排気の熱を吸収し、屋外からの給気に熱を再利用する換気方法です。
熱を再利用することで、冬場に外から入ってきた冷たい空気を暖め直す必要がないため、全館空調を省エネ運転できます。
全館空調は、換気と空調がセットになって設計されるため、換気設備の質にもこだわることがポイントです。
ダクトの経路を確認しておく
間取りが決まって全館空調の詳細な打合せに進んだら、ダクトの経路を確認しておくこともポイントです。
設備自体は良くてもダクトがクネクネと曲がったり潰れて施工されていたりすると、空調の効きが悪くなってしまいます。
設計図面を見せてもらい詳細な説明を受け、工事が始まってからも現場で状態を見て施工不良がないかチェックしてくださいね。
高気密・高断熱な住宅を建てる
全館空調を採用するなら、高気密・高断熱住宅を建てられる住宅会社を選びましょう。
なぜなら、どんなに家中を暖めたり冷やしたりしても、建物の壁や窓などから熱が逃げてしまっては快適な室温にならないからです。
断熱材や高性能サッシを適切に施工し、建物の隙間を減らす工夫をしている会社に家づくりを任せてくださいね。
日射を考慮したパッシブデザインを設計に取り入れる
パッシブデザインを取り入れた住宅を建てることも大切なポイントです。
夏場・冬場の日射を考慮したパッシブデザインの家なら、軒や庇などによって太陽の日差しを遮ったり取り込んだりできるため、快適な室温を保ちやすくなります。
機械の力だけでなく、設計の工夫で自然の太陽光を活かした家づくりをすることで、全館空調の効果を高めることが可能です。
「太陽光発電システム+蓄電池・V2H」と全館空調を併用する
全館空調を採用するなら、「太陽光発電システム+蓄電池・V2H」の併用も検討しましょう。
- 太陽光発電システム:太陽光によって自家発電するシステム
- 蓄電池;太陽光発電による余剰電力や電気料金の安い深夜電力を溜めておける設備
- V2H:電気自動車のバッテリーを家庭用電源として使用したり、電気を溜めておいたりできるようにする設備
これらの設備を併用することで、全館空調の電気代をより抑えることが可能です。
太陽光発電システムやV2Hについてはこちらのコラムをご覧ください。
・太陽光発電は何キロのせるべきなのか|目的別の容量、蓄電池と組み合わせる場合も解説
・「V2H」とは何かをわかりやすく解説|メリット・デメリットや蓄電池との違いも
まとめ
「全館空調はやめたほうがいい」という意見もありますが、実際にはメリットも多いため、理想の暮らしにマッチするなら採用を検討すべき空調設備です。
効率的に全館空調を稼働させるために、高気密・高断熱住宅を建てたり、高効率な換気システムを導入するなどの工夫を取り入れることもおすすめします。
全館空調は設計・施工によっても仕上がりが大きく異なるため、施工実績が豊富な住宅会社に家づくりを相談しましょう。
ハグデザインでは、全館空調を導入した住まいを建築可能です。
経験豊富な一級建築士が、お客様の暮らしに寄り添った快適な住まいをご提案いたします。
全館空調を採用した展示場もご案内できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。