電気自動車を乗っている方や所有する予定があるなら、「V2H」というワードは耳にする機会があると思います。
V2Hとは、電気自動車の大容量バッテリーを活かして、家庭用電源として活用できるシステムです。
こちらの記事では、V2Hの基礎知識や仕組み、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
蓄電池やEV充電設備との違いをお伝えし、V2Hシステムを導入した住まいの実例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
<コラムのポイント>
- V2Hとは、電気自動車(EV・PHV)の電力を家庭用電力として活用するシステムのことです。
- V2Hを通じて電気自動車と建物を連携させることで、光熱費削減や停電時の電力確保が実現します。
- V2Hは接続や電力供給の方法に種類があり、設置場所の検討も必要なため、施工実績が多い住宅会社への相談がおすすめです。
V2Hとは
V2Hとは、電気自動車(EV)の電力を家庭用電力として活用するシステムのことです。
PHV(PHEV)などの、外部電源から充電できるタイプのハイブリッド車もV2Hと接続することができます。
EVやPHVに搭載されている大容量バッテリーを活かして、自家消費できる画期的なシステムです。
読み方
V2Hは「ブイ・ツー・エイチ」と読みます。
「Vehicle to Home(ビークルトゥホーム)=車から家へ」の略語です。
電気自動車に溜めた電力を家庭で有効活用するという意味合いを持っています。
仕組み
基本的なV2Hの仕組みを確認しましょう。
V2Hを導入するために必要になる基本的な設備は次の3種類です。
- V2H対応の電気自動車(EV・PHV)
- V2Hスタンド
- 充電ポッド(※)
※V2Hスタンドと充電ポットが一体化した商品もあります。
上記3点を建物とつなぎ合わせ、家の分電盤を通じて家庭用電気として供給することができます。
もちろん、一般的なEV充電設備のように家庭の電力を使って、電気自動車を充電することも可能です。
さらに、太陽光発電システムや蓄電池などとV2Hを連携させるタイプもあります。
V2Hの接続方法については後ほど詳しく解説します。
EV充電設備・家庭用蓄電池との違い
V2Hと似た設備として「EV充電設備」や「家庭用蓄電池」などがあります。
これらの特徴とV2Hとの違いを確認しましょう。
EV充電設備 | 家庭用蓄電池 | |
---|---|---|
特徴 |
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V2Hとの違い |
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V2Hは、EV充電設備と家庭用蓄電池のどちらの機能性も持ち合わせています。
家庭のみならず移動先でも電気の共有ができる点もV2Hの特徴です。
V2Hの種類
V2Hには家庭との接続方法や電力供給に種類があります。
違いを理解して、お住まいに合わせたV2Hを採用しましょう。
接続方法は「非系統連系型」または「系統連系型」
V2Hの接続方法は「非系統連系型」または「系統連系型」の2種類です。
【非系統連系型】
「非系統連系型」はV2Hが独立して建物と接続しているタイプです。
電気自動車からV2H経由でお住まいに給電しているときは、電力会社や太陽光発電システムから供給される電気は使用できません。
ポイントをご紹介します。
- 太陽光発電システムの余剰電力を活用できないため光熱費は「系統連系型」よりも削減しにくい
- 停電時に太陽光発電システムから電気自動車に充電できない
- 給電方法が切り替わる際に瞬間的な停電を起こす
太陽光発電システムと連携を取れないことにより、様々なデメリットが生じます。
そのため、太陽光発電システムを設置していない、または売電にのみ利用している場合に限り「非系統連系型」を選びましょう。
それ以外の場合は、これからお伝えする「系統型」が適しています。
【系統連系型】
「系統連系型」は、V2H・太陽光発電システム・家庭用蓄電池が連携している接続方法です。
電気自動車からV2H経由でお住まいに給電しているときでも、電力会社や太陽光発電システムから供給される電気を使用することが可能です。
- 複数の給電方法を同時に使えるため非系統連系型で起こる「瞬間的な停電」を避けることができる
- 太陽光発電システムの余剰電力を電気自動車や家庭用蓄電池に溜められるため光熱費を削減しやすい。
- 停電時に太陽光発電システムによる電力を電気自動車に溜めることができる
太陽光発電システムで発電した電気を自家消費する予定のお住まいには、系統連系型がおすすめです。
電力供給は「全負荷型」または「特定負荷型」
V2Hを採用する場合、電力の供給方法にも種類がありますので理解しておきましょう。
全負荷型
「全負荷型」とは、家庭内の全ての電気回路と接続する方法です。
電気自動車から供給した電力を家全体で使える仕組みのため、停電時でも普段と同様に電気を使用することができます。
利便性は高いですが、家電などがコンセントに挿しっぱなしになっていると、待機電力によって無駄な電力消費がある点はデメリットです。
オール電化のご家庭や緊急時でも様々な空間で電気を使いたい場合などに、全負荷型が適しています。
特定負荷型
「特定負荷型」とは、電気自動車の電力を指定した回路だけに給電する方法です。
緊急時に使いたい場所をあらかじめ指定し、給電できるコンセントや電気設備を施工します。
特定負荷型は、電気自動車に蓄えられた電力をなるべく消費しないように使い、停電時に長く住まいへの給電を保ちたいという考えの方におすすめです。
V2Hシステムを採用するメリット
V2Hシステムを採用するメリットをご紹介します。
電気代の節約につながる
系統連系型のV2Hシステムなら、太陽光発電システムの余剰電力分を電気自動車に溜められるため、夜間の買電コストを削減することができます。
電力の自給自足を実現しやすく、光熱費の節約につなげることが可能です。
非系統連系型の場合でも、電気代の安い深夜電力を買電して電気自動車に溜めることができるため、一般的な電力消費の家庭と比べると電気代の支出を抑えられます。
災害時・停電時でも自宅で電気が使える
V2Hシステムを採用することで、災害時や停電時に電気自動車の大容量バッテリーを家庭用電源として使うことができます。
太陽光発電システムと連携させれば、より長時間の電気使用が可能です。
住まいの防災対策として、V2Hの導入を検討してみましょう。
EV充電設備より短時間で車を充電できる
V2Hシステムは、一般的なEV充電設備より出力が大きいため、短時間で電気自動車をフル充電できます。
帰宅してから出かけるまで、十分に時間が取れない場合でも、バッテリー不足のリスクを軽減することが可能です。
中には、200Vの普通EV充電設備と比べて、約半分の時間で電気自動車の充電ができる商品もあります。
家庭用蓄電池よりも容量が大きい
家庭用蓄電池と比べて、電気自動車はバッテリーの容量が大きいため、より多くの電力を蓄えることができます。
電気自動車がフル充電されていれば、停電しても長期間の電力供給が可能です。
V2Hを採用することで、日常使いによる利便性はもちろんのこと、お住まいの防災力も高まります。
補助金を活用できるケースがある
V2Hシステムを採用することで、国や自治体の補助金を活用できるケースもあります。
【V2H充放電設備の導入補助金(国の補助金)】
- 補助金額(機器代):1/3以内(上限30万円)
- 補助金額(施工費):上限15万円
※2024年度の応募は終了しております。
各自治体の補助金制度はホームページをチェックしてみてくださいね。
V2Hシステムを採用するデメリットと注意点
V2Hシステムを採用するデメリットと注意点を理解しておきましょう。
導入費用がかかる
V2Hシステムは、一般的なEV充電設備よりも導入費用がかかります。
EV充電設備と比べて、数十万円~百万円を超える差額が生じるケースも少なくありません。
初期コストと導入後のメリットを考えながら、V2Hシステムの採用を検討しましょう。
V2H機器の設置場所を考慮した設計が必要
V2H機器の設置場所には、考慮すべきポイントがあります。
- 自宅と隣接しつつ車両に接続できる場所
- 機器のメンテナンススペースを確保できる場所
- 雪が積もっても埋もれない場所
- 水没リスクが高いエリアは基礎等で高さをつける
V2Hは、電気自動車と建物の両方に接続が必要な設備ですので、意外と設置場所に困るケースもあります。
使いやすい位置を選び、なおかつ建物の外観デザインを損なわない場所に設置しましょう。
駐車している間しか蓄電ができない
電気自動車はご自宅に駐車している間しか、電力の蓄電や供給ができません。
対して、家庭用蓄電池ならご家族が車で外出していても、常に機器が接続されている状態です。
そのため、車を使用した外出が多いご家庭はV2Hのメリットを感じにくい可能性があります。
ライフスタイルを考慮しながら、V2Hシステムの採用を検討してみてくださいね。
購入する車種が限られる
購入できる車種が限られてしまう点は、V2Hを導入するデメリットと言えます。
V2Hに対応する車は徐々に増えてきたとは言え、まだまだ少ないというのが現状です。
電気自動車の中でも、V2Hに対応していない車種は少なくありません。
V2H+太陽光発電システム+蓄電池を採用した住まいの実例
V2H+太陽光発電システム+蓄電池を採用した家の実例をご紹介します。
駐車スペースを建物の南側・北側につくりました。
北側の駐車スペースに停めると、電気自動車の充電・V2Hへの接続ができます。
使用頻度の多い充電ポッドは、露出した状態で設置しました。
建物の裏手側に設置したため、外観デザインを損ねることはありません。
V2Hスタンドなどの大型機器は、木製格子の内側へ設置しています。
格子の引き戸を閉めてしまえば機器が目立ちません。
また、建物を凹ませた空間に設置しているため、多少の雨等は防ぐことも可能です。
南面の屋根には太陽光パネルを搭載し、蓄電池・V2Hと連携させた「テクノロジー&エコロジー」の住まいを実現しました。
こちらの弊社のモデルハウスでご見学可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
お住まいにV2Hを導入することで電気代を節約でき、防災力を高めた家づくりが実現可能です。
また、太陽光発電システムや蓄電池と連携させることで、よりV2Hのメリットを感じることができます。
連携方法や電力供給などに種類があり、V2H設備自体も様々な商品があるため、施工実績が多い住宅会社に相談しましょう。
ハグデザインでは、V2Hシステムを導入した住まいを建築可能です。
経験豊富な一級建築士が、お客様の暮らしに寄り添った住まいをご提案しますので、ぜひお気軽にご相談くださいね。