「スマートハウス」は、IT(情報技術)と太陽光発電システムや蓄電池などの電気設備を掛け合わせて、省エネ性や利便性を高めた住まいです。
昔の家にはない豊かな暮らしをもたらしてくれるスマートハウスですが、果たしてデメリットはあるのでしょうか。
そこで今回は、スマートハウスの概要やメリット・デメリットをご紹介します。
スマートハウスで採用すべき住宅設備や実例などもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
<コラムのポイント>
- スマートハウスとは、IT(情報技術)を活用して省エネ性や利便性を高めた住まいです。
- 建築費用が高くなる点などがスマートハウスのデメリットですが、光熱費が抑えられたり住まいの防災力が高まったりするなどのメリットもあります。
- デメリットの対策方法を熟知していて、スマートハウスの施工実績が豊富な住宅会社に家づくりを依頼することがポイントです。
Contents
スマートハウスとは
スマートハウスはIT(情報技術)を活用し、住宅で使うエネルギー量を最適化して、省エネ性能を高める住まいを指します。
具体的には、次の3つのエネルギーに着目した家がスマートハウスの基本です。
- 創エネ:家庭内でエネルギーを創り出す
- 畜エネ:家庭内にエネルギーを蓄える
- 省エネ:家庭内の消費エネルギー量を抑えて管理する
住まいの消費エネルギーを抑えられるスマートハウスは、CO2削減に貢献できるため、国や自治体からも推奨されている住宅の1つです。
創エネ・畜エネ・省エネを実現させる、スマートハウスの設備を確認していきましょう。
スマートハウスで導入すべき設備
スマートハウスで導入すべき設備をご紹介します。
目的 | 特徴 | |
---|---|---|
太陽光発電システム | エネルギーを創る | 太陽光発電した電力を住まいで活用でき、余剰分は売電できる |
蓄電池 | エネルギーを溜める | 余剰電力を溜めて、夜間や非常時に使うことができる |
HEMS | エネルギーを管理する | 住宅のエネルギー使用量を管理して最適化できる |
高効率の給湯器・エアコン | 省エネルギー性を高める | 少ないエネルギーでお湯を沸かしたり冷暖房したりできる |
V2H | エネルギーを活用する | EV(電気自動車)などのバッテリーを家庭用電源として活用できる |
「すべて導入しなければスマートハウスにならない」などの決まりはありませんが、創エネ・畜エネ・省エネの住まいをつくるためにはこれらの設備の採用が望ましいです。
スマートホームとの違い
スマートハウスと似ている言葉に「スマートホーム」があります。
- スマートハウス:IT(情報技術)を活用して省エネ性能を高めることが目的
- スマートホーム:IoTを導入して暮らしの利便性を高めることが目的
IoTとは「Internet of Things」の略で、様々な家電や設備をインターネットとつなぎ、遠隔操作や自動化を可能にするものです。
近年では、スマートホームも「スマートハウスの機能性の1つ」として捉えられているケースも少なくありません。
ZEHとの違い
スマートハウスの目的である「省エネ」や「創エネ」というワードを聞くと、ZEHとの違いが気になる方もいますよね。
ZEHとは、省エネ・創エネによりエネルギー収支をおおむねゼロ以下にする住宅のことを指します。
住まいの断熱性なども加味されている点、明確な認定基準がある点がZEHとスマートハウスの違いです。
とは言え、ZEHも太陽光発電システムやHEMS、高効率な設備などを導入するため似たような住まいであることには違いありません。
スマートハウスの中にはZEH基準を満たした住まいも多くあります。
スマートハウスを建てるデメリットと対策
スマートハウスを建てるデメリットをご紹介します。
- 建築費用が高くなりやすい
- 電気系設備のメンテナンス頻度・費用が増える
- 太陽光の発電が予測通りいかないケースも
- HEMSやIoTに対応していない設備・家電もある
- 将来的に設備が対応しなくなる可能性も
それぞれ詳しい内容を確認していきましょう。
①建築費用が高くなりやすい
スマートハウスは、設備の導入が必要なため建築費用が高くなりやすいです。
搭載量によって大きく価格差はありますが、太陽光発電システムは100~200万円台の費用がかかるケースも少なくありません。
他の設備も1つあたり数十万円はかかるため、スマートハウスは一般的な家よりも数百万円の費用追加が予測できます。
【対策】
あらかじめスマートハウスにかかる建築費用を確認し、資金計画を立てることが大切です。
また、スマートハウスにすることで「どのくらいランニングコストを削減できるか」などを考慮しながら採用を検討しましょう。
②電気系設備のメンテナンス頻度・費用が増える
スマートハウスは、太陽光発電システムや蓄電池などの電気系設備が一般的な住宅と比べて多いです。
そのため、定期的な点検が必要になり、状態に応じて交換や修繕の費用がかかる可能性もあります。
また、修理ができない場合や耐用年数を超えて故障した場合は、設備の買い替えが必要です。
設備が多いスマートハウスは、点検の手間や費用の負担がかかりやすい点を理解しておきましょう。
【対策】
入居後の点検やアフターサポートが充実している住宅会社を選ぶことがポイントです。
また、設備を買い替えるタイミングや費用などをあらかじめ把握しておき、住宅ローンの返済に加えて貯蓄もできるような資金計画を立てましょう。
③太陽光の発電が予測通りいかないケースも
スマートハウスは、太陽光発電システムを導入して「創エネ」をするケースが多いです。
晴れている日は十分な発電量が確保できますが、雨や曇りの日は予測通りに発電しない可能性もあります。
【対策】
曇りの日も高効率な発電が期待できる太陽光パネルもありますので、様々なメーカーを比較検討してみましょう。
V2Hなども併せて導入し、EVのエネルギーを賢く使うなどの方法もおすすめです。
④HEMSやIoTに対応していない設備・家電もある
エネルギーを制御・管理するHEMS、設備や家電を遠隔操作・自動化ができるIoTは、スマートハウスに欠かせない設備です。
しかし、全ての設備や家電がHEMS・IoTに対応しているわけではありません。
【対策】
HEMS・IoTの導入を前提として、住宅設備や家電を選びましょう。
⑤将来的に設備が対応しなくなる可能性も
将来的には、スマートハウスに導入した設備が対応しなくなるリスクがあります。
なぜなら、より良い仕組みや設備が開発されて、一般家庭にも導入される可能性があるからです。
地デジが普及して、アナログテレビが見られなくなったのと同様の現象が起こることは十分に考えられます。
【対策】
入居後も最新の機能や設備などの情報をキャッチし、スマートハウスをアップデートしていきましょう。
スマートハウスを建てるメリット
スマートハウスには、多くのメリットもあります。
- 極力電気を買わないため光熱費削減につながる
- 停電時でも電気やお湯を使うことができる
- 家のエネルギーを管理できるため省エネで効率的
- 蓄電池やV2Hによって電気を蓄えることができる
- IoTによって家電や設備を管理できる
- 補助金を活用できるケースがある
それぞれ詳しく解説します。
①光熱費を削減できる
スマートハウスには、電気を創ったり蓄えたりする設備があるため、一般的な住宅と比べて買電量を削減することができます。
自家発電によって電気を買う量が減らせれば、光熱費を削減することが可能です。
スマートハウスにするために建築予算を上げたとしても、長い目で見れば得だったというケースも少なくありません。
②停電時でも電気やお湯を使うことができる
太陽光発電システムやV2Hがあるスマートハウスなら、停電しても電気を使える点がメリットです。
電気を使って給湯するエコキュートなら、お湯を使うこともできます。
また、蓄電池やV2Hがあれば太陽光の発電が見込めないタイミングも電気が使えるため、夜間の停電時でも生活の質を保つことが可能です。
災害時の対応力が高い点もスマートハウスの魅力と言えます。
③家のエネルギーを管理できるため省エネで効率的
HEMSは家庭内で使っている電気機器の稼働状況や使用量などを、モニターでチェックできる便利なシステムです。
発電量や電気の使用量を確認して、使う家電を限定させたり電気を使う時間を分散させたりするなど、ご自身で消費エネルギー量を調整できます。
電気の使用量を「見える化」することで節電意識が高まり、省エネかつ光熱費がかかりにくい暮らしが実現可能です。
④蓄電池やV2Hによって電気を活用できる
蓄電池やV2Hをスマートハウスに取り入れれば、より電気を上手に活用した暮らしを送れます。
太陽光発電システムの余剰電力は、蓄電池に蓄えておくことができ、夜間にも自宅で創った電気を活用可能です。
また、V2Hを採用することで、EVやPHEVの大容量バッテリーを家庭用電源として使うことができます。
お住まいにあるエネルギーを無駄なく使いエコな暮らしを送りたいなら、スマートハウスを採用しましょう。
⑤IoTによって家電や設備を管理できる
家電や住宅設備をインターネットでつなぐIoTを採用すれば、電気機器の自動化や遠隔操作が可能です。
例えば、外出時にスマホアプリでエアコンをつけておけば、帰宅時には部屋が快適になっています。
音声でお風呂のお湯を溜めたり照明を点けたりできるなど、様々なシチュエーションでIoTの便利さを感じるはずです。
暮らしの快適性や利便性を高めたい方には、IoTを導入したスマートハウスをおすすめします。
⑥補助金を活用できるケースがある
HEMSなどを導入したスマートハウスを建てることで、補助金を活用できるケースがあります。
国が行っている補助金制度は次のような内容です。
- DER(分散型エネルギーリソース)補助金:太陽光発電・蓄電池・HEMSを同時設置が必須。その他、V2Hやエネファームも補助対象になる。
- 次世代HEMS実証事業:ZEH+の建物に「次世代HEMS」を導入した建物が対象。
【参考】事業トップ(令和5年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用実証事業)|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
【参考】次世代HEMS実証事業 公募情報|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
どちらも2024年11月時点ではすでに公募が終了しているため、新たな情報が公開されたらチェックしてみてくださいね。
他にも自治体が行っている補助金制度もありますので、上手に活用してお得にスマートハウスを建てましょう。
スマートハウス+αでより安全・快適な住まいに
スマートハウスに次のような設備や性能を採用することで、より安全で快適な住まいを建てることができます。
高耐震 | 地震の揺れを打ち消して建物への負荷を軽減させるような構造体を採用する |
---|---|
高気密・高断熱 | 質の高い断熱材やサッシを適切に施工して断熱性を高め、建物の隙間を極力なくして気密性を高める |
パッシブ設計 | 軒で日差しの量を調整したり窓の配置によって風通しを良くしたりと、設計の工夫で快適性を高める |
全館空調システム | 室内の温度差をなくして快適な暮らしを実現できるシステム |
詳しくはこちらのページで解説していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
【実例紹介】スマートハウスを導入した住まい
スマートハウスを導入した住まいの実例です。
大容量の太陽光発電システムと併せて蓄電池も導入したため、余剰電力も無駄なく活用できます。
V2Hを採用し、EVの充電だけでなく家庭用電源としても使えるようにしました。
車を使っていないときのバッテリーを、夜間や非常時などに住まいの電源として使用可能です。
住まいの機能性だけでなく、デザイン性や暮らしやすさにもこだわっています。
LDKの一角に小上がりの畳コーナーをつくりました。
畳の下には造作の引き出し収納をつくり、空間を無駄なく活用しています。
暮らしを豊かにする工夫がたくさん盛り込まれた、こだわりのスマートハウスです。
まとめ
スマートハウスを採用することで、住まいの省エネ性や利便性を高めたり光熱費を抑えたりすることができます。
デメリットもありますが、どれも事前に把握しておけば対策できるケースが多いです。
スマートハウスの施工実績が豊富な住宅会社に家づくりを依頼し、暮らしやすい住まいを建てましょう。
ハグデザインでは、レジリエンス性能(回復力)や省エネ性を持つスマートハウスは、人々を守る上で必要なものだと考えています。
一級建築士がお客様の暮らしに寄り添ったスマートハウスをご提案しますので、ぜひお気軽にご相談くださいね。