マイホームを建てる際に、災害に強い家を建てたいと望む方は多いでしょう。
どんなに暮らしやすい間取りやおしゃれなデザインの家を採用しても、災害の被害に遭ってしまっては暮らしは一変してしまいます。
そこで今回は、災害に強い家に共通する特徴をお伝えします。
立地・構造・間取り・設備の4つの項目に関して、具体的な工夫もお伝えしますので家づくりの参考になさってくださいね。
<コラムのポイント>
- 災害に強い家は建物と命を守ることと、家族の暮らしを守ることの2つの役割があります。
- 立地・構造・間取り・設備を工夫して「災害に強い家」を建てましょう。
- 経験豊富な信頼できる設計士に災害に強い家を提案してもらうことが成功のポイントです。
Contents
建物と家族の暮らしを守る「災害に強い家」が必要
日本は世界の中でも自然災害が多い国です。
毎年のように地震や台風、豪雨などのニュースを目にしますし、実際に被害に遭われた方もいるでしょう。
一般財団法人 国土技術研究センターでは、世界で起こった大地震の内の約2割が日本で起こっているとの報告がされています。
日本の国土の面積は総務省統計局の世界の統計2022で全世界のたった0.29%しかありません。しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の18.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.1%が日本にあります。また、全世界で災害で死亡する人の1.5%が日本、全世界の災害で受けた被害金額の17.5%が日本の被害金額となっています。このように、日本は世界でも災害の割合が高い国です。
平成29年の台風第21号では、群馬県の伊勢崎市や太田市でも水災に見舞われたことは記憶に新しいと思います。
地域によっては床下・床上浸水の被害がありました。
マイホームを建てるなら、不測の自然災害の影響を最小限に留めるための工夫は必須です。
地震・台風・豪雨・大雪など、さまざまな自然災害から建物と家族を守る家を建てなければなりません。
また、自然災害時には断水や停電など、さまざまな状況の中で生活を送る必要があります。
災害に強い家を建てるなら建物と家族の命を守るだけでなく、災害後の家族の暮らしを守るための家を建てることも大切です。
災害に強い家に共通する4つの特徴とは
災害に強い家に共通する特徴を紹介します。
①災害の影響を受けにくい土地に建っている【立地】
災害に強い家は、立地が大きく関係しています。
例えば、建物が倒壊しないためには、地盤が強固であることが重要です。
どんなに揺れに強い建物でも、豆腐のような軟弱な地盤の上に立っていたのでは、地震によって傾く可能性は高まります。
また、川の近くに建っている建物は、台風や豪雨によって床下・床上浸水しやすいです。
山のふもとに家を建てれば、土砂災害の危険性がありますよね。
このように、立地によって災害の影響の受けやすさは変わります。
今までのデータを基に、自然災害が起きにくいエリアや起きても被害が大きくない立地を選びましょう。
②耐震性の高い構造を採用している【構造】
建物の強さは耐震性の高さで変わります。
細い棒で作られた枠組みよりも、木箱のように六面を囲まれた枠組みの方が、崩れにくいことは想像できますよね。
建物も同じで、適切な場所に柱や壁が配置されて面で支えられた家は、耐震性が高まります。
また、基礎などの建物を支える地震に強い家は揺れに耐えるのではなく、揺れを吸収して受け流すことが必要です。
どんなに強い建物でも揺れの力をすべて受け止めていては、徐々に劣化して繰り返しの地震に耐えることはできません。
このように耐震性の高さは、揺れに耐える「耐震構造」と揺れを吸収・抑制する「制震構造」の組み合わせによって実現します。
それぞれの住宅会社で耐震性を高める工夫がされていますので、納得するまで説明を受けて家づくりを任せる会社を選びましょう。
③シンプルかつバランスの良い建物を建てている【間取り】
災害の影響を受けにくい家は、シンプルでバランスが良いという特徴があります。
シンプルとは、建物や屋根の形状が単純で複雑でないという意味です。
建物に凹凸が多いと建物の揺れを受け流しにくく、どこか1ヵ所に負荷がかかって崩れてしまう可能性が高まります。
また、屋根形状が複雑だと雨漏りリスクが高まり、台風や豪雨のときに被害を受けるかもしれません。
また、バランスが良い家とは、一階・二階の壁量や壁の位置が関係しています。
一階の壁が極端に少なく二階の壁が多いと、一階にかかる負荷が大きくなってしまいます。
建物の一部に窓が集まっていて壁がない家もバランスが悪く、屋根の荷重などで壁のない部分にかかる負荷が大きいです。
同じ構造で建てても、シンプルでバランスの良い建物の方が耐震性は高まります。
使いやすい間取りを採用することは大切ですが、耐震性にも目を向けた間取りづくりも意識してみてくださいね。
④災害時に役立つ設備を採用している【設備】
「家族の暮らしを守る」ためには、自然災害の被害を受けにくい家を建てるだけでなく、災害時に役立つ設備を採用することも大切です。
災害の影響で断水や停電などが起こっても、自給自足できれば最低限の暮らしを送ることができます。
また、建物に被害があっても代替の設備で一時的に家を守ることができれば、修繕が完了するまで別の場所へ移り住む必要がありません。
本当に災害に強い家を建てるために、災害が起きた後の暮らしまで考えた家づくりを行いましょう。
【立地編】災害に強い家を建てるコツ3選
▷施工事例|群馬県邑楽郡邑楽町新築注文住宅|黒のアクセントサイディング
災害に強い家を建てるために、立地面で気を付けるコツを紹介します。
ハザードマップで災害時の危険性を確認する
建築地を決めるときは、ハザードマップを見ながら災害の危険性を確認しましょう。
各市町村で、洪水しやすさや地震の起こりやすさをマップに記した「ハザードマップ」が準備されています。
▼伊勢崎市のハザードマップ
洪水の起こりやすさが色分けされているため分かりやすいです。
大きな河川沿いなどは赤色になっており、洪水による浸水の高さが示されています。
▼群馬県北西部の震度分布図
大きな地震が起きた時に想定される揺れの強さを、震度5強~6強で色分けして示しています。
市町村によっては、道路冠水が起こりやすい場所や災害時の避難場所などを明示している場合もあります。
ホームページや役所で閲覧できますので、必ず事前に確認しましょう。
過去の地盤データを参考にする
地盤の強さは目で見ただけでは判断できないため、過去のデータを参考にしましょう。
中には、過去の調査データをホームページ上に公表している、地盤調査会社もあります。
希望するエリアを検索するとデータを確認できるので、建築地の地盤の強さを予測することが可能です。
ただし、地盤は「弱い箇所」と「強い箇所」が混在しているエリアも多いため、公表されているデータは地盤の強さを確約するものではありません。
あくまで参考として、土地選びの際に活用してみてくださいね。
土地購入前に現地・役所調査を行う
土地購入前に現地を見たり役所へ行ったりして、詳しく調査することも大切です。
具体的には次のような項目を確認しましょう。
- 周辺の土地と比べて低くないか
- 雨の日に土地や周辺道路に水が溜まっていないか
- 崖に面した土地でないか
- 埋め立てた土地でないか
- 土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に指定されていないか
高低差のある土地や水が溜まっている土地は、豪雨時に冠水しやすいです。
また、崖に面しているとがけ崩れ、埋め立てた土地だと地盤沈下などの危険性があります。
土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域は役所に行って該当するかを確認しましょう。
【構造編】災害に強い家を建てるコツ3選
災害に強い家を建てるために意識すべき構造に関するコツを紹介します。
十分な壁量を確保して強靭に接合する
木造・鉄骨・コンクリート造などの構造の種類は、災害に強い家と直結するわけではありません。
鉄筋コンクリート造の方が、引っ張る力や圧縮に対する力は強いです。
しかし、木造の方が軽量なので、地震に対する揺れは少なくなります。
重要なのは、建物を支える壁の量と柱・梁・面などを接合する強さです。
耐力面材を適切な箇所に使った建物は耐震性が高まりますし、構造体が強固に結合されていれば損壊の危険性も下がります。
住宅会社がどのような耐震構造を採用しているのかを確認してくださいね。
地震の揺れを吸収する制震ダンパーを採用する
自身の揺れを吸収して受け流すための工夫をすることも大切です。
制震構造を取り入れるなら「制震ダンパー」を採用しましょう。
制震ダンパーとは、油圧やゴムの弾力性などを利用して吸収する装置のことです。
繰り返しの地震にも力を発揮するため、建物にかかる負荷を軽減することができます。
長い間建物を守るためには、地震の力を上手く受け流せる構造を取り入れることが大切です。
屋根を軽量化して地震の揺れを軽減
建物を軽量化することで、地震の揺れを軽減することができます。
特に高い位置にある屋根などの部材を軽量化することで、揺れの幅は少なくなります。
瓦からガルバリウム鋼板へ変更することで、建物にかかる荷重は大きく変わります。
メンテナンス性やデザインだけでなく、耐震面も考えて外装材を選びましょう。
【間取り編】災害に強い家を建てるコツ4選
災害に強い家を建てるために採用すべき間取りのコツを紹介します。
長方形を組み合わせたような間取りを採用する
建物形状は、四角形に近い間取りがおすすめです。
シンプルな建物形状の方が揺れの力が分散されて、1ヵ所に負荷がかかりにくくなります。
真四角の総二階の建物が耐震性に優れていますが、デザイン的に味気ないと感じる方もいるでしょう。
その様な場合は、細かな凹凸を付けるのではなくて、箱を組み合わせることを意識して間取りづくりを行ってみてくださいね。
平屋を建てる
▷施工事例|群馬県邑楽郡邑楽町新築注文住宅|黒のアクセントサイディング
平屋はワンフロアで建物を設計できるため、二階からの荷重がかかりません。
そのため、耐震面で考えると非常に優れた間取りです。
ただし、水災で床上浸水した場合、二階がないと逃げ場がなくなってしまいます。
屋根裏空間などを活用してロフトなどを作り、浸水に対する備えをしておくと安心です。
オーバーハングや必要以上の大開口・大空間は避ける
耐震性の高い間取りにしたいなら、オーバーハングや必要以上の大開口は避けましょう。
- オーバーハング:二階が一階よりもせり出している建物
- 大開口・大空間:大きな窓や開口を設けて壁や柱の感覚があいた状態
オーバーハングしている部分の荷重を一階で受け止めることができないため、建物のバランスが悪くなって倒壊の危険性が高まります。
また、大開口や大空間にすると柱や壁の量が減って、耐震性能が下がってしまうケースがほとんどです。
上記のような間取りを取り入れる場合は、耐震性が確保できるか設計士に相談しながら打合せを進めましょう。
防災グッツを備蓄できるパントリーや土間収納を
災害時に備えて防災グッツや非常食などを用意している方も多いでしょう。
避難時にすぐ防災グッツを取り出せるように、土間収納を作ることをおすすめします。
玄関付近の土間収納なら、スムーズに取り出して避難することが可能です。
また、災害時に自宅で過ごし、買い出しなどに長期間行けなくなることも考えられますよね。
備蓄品をたっぷり収納できるパントリーがあると、買い溜めして万が一の事態に備えることができます。
【設備編】災害に強い家にするために採用すべきもの6選
災害に強い家にするためにおすすめな住宅設備を紹介します。
シャッター
災害対策にはシャッターをおすすめします。
なぜなら、台風時に風が窓に直撃することを防ぐことができますし、飛来物からも守ってくれるからです。
万が一、窓ガラスが割れてしまった際にも、シャッターを閉めておけば寒さの一時しのぎになります。
火災時の延焼も防ぐなど、災害時に役立つ設備です。
造作家具
▷施工事例|群馬県太田市新築注文住宅|1LDK、吹抜とロフトのある家
壁に造り付けられた家具なら、地震時に倒壊の危険性がなく安心です。
置き型の家具だと大きな揺れで倒れてしまう可能性があり、下敷きになると避難できなってしまいます。
後から家具を購入して置く場合は、倒れても影響が出にくいロータイプがおすすめです。
太陽光発電システム・蓄電池・V2H
▷施工事例|群馬県前橋市新築注文住宅|太陽光+蓄電池+V2Hのスマートハウス
太陽光発電システムと蓄電池・V2Hを採用することで、災害時に送電が途絶えても電気が使える状態になります。
- 太陽光発電システム:屋根上に太陽光パネルを乗せて自家発電するシステム
- 蓄電池:太陽光発電システムによって発電した電力を蓄える装置
- V2H:電気自動車の大容量バッテリーを家庭用の電源として使うシステム
太陽光発電システムだけでは、日中の発電している分の電力しか使うことができません。
蓄電池やV2Hを併せて採用することで、電気やお湯、冷暖房などを夜間でも使うことができるようになります。
停電時でも使えるトイレ
タンク付きのトイレなら、停電時でもタンク内の水を使って流すことができます。
トイレは生活する上で必須の設備ですので、災害時でも使えると安心ですよね。
タンクレストイレでも、停電時に手動レバーなどで排水できるタイプがありますので検討しましょう。
エコキュート
エコキュートは大きなタンクに多量の水が溜まっているため、断水時はタンクの水を生活水として活用可能です。
停電時でも手動で排水することができるため、屋外で水を汲んで室内で使うことができます。
水タンク
断水時に水が使えるように、タンクを備え付けておくことも可能です。
基礎内部などに水タンクを設置して水を確保しておく方法をおすすめします。
経験豊富な設計士に「災害に強い家」を設計してもらうことが大切
今回、災害に強い家を作るためのさまざまな工夫を紹介しました。
しかし、設備や間取りは取り入れることはできても、構造や地盤に関することは分からないという方もいるでしょう。
実際の建築では細かな構造計算を基に耐震性などを測っているため、建築主の工夫だけでは取り入れられない面もあります。
そのため、本当に災害に強い家を建てたいなら、経験豊富で信頼できる建築士に設計してもらうことがポイントです。
暮らし要望を取り込みつつ、災害に強い家を提案してくれるような住宅会社に家づくりを依頼しましょう。
ハグデザインは営業マンがおらず、建築士が初めから建物のヒアリングやご提案を行っています。
災害に強い家のノウハウも持ち合わせていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
災害に強い家を建てたいなら、立地・構造・間取り・設備などさまざまな工夫を取り入れた家づくりを行いましょう。
建築する建物に合わせた対策が必要なため、経験豊富な設計士に依頼ことが大切です。
災害時の建物の強さだけでなく、災害後の暮らしまで考えてマイホームを建築してくださいね。
ハグデザインでは10年後、20年後、30年後‥と、それぞれの節目に「この家にしてよかったな」と思ってもらえるような家づくりをしております。
災害時にも強みを発揮するスマートハウスを得意としておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。