多くの木造平屋・二階建ての住まいが該当していた「4号特例」の縮小が決まりました。
2022年6月17日に建築基準法が改正・公布され、2025年4月から施行されることが予定されています。
4号特例のは縮小は、これから新築やリフォームする方にも関係する話題のため、ぜひチェックしていただきたい内容です。
そこで、今回は「4号特例縮小」の内容と変更点、これから家づくりをする方への影響をわかりやすく解説します。
<コラムのポイント>
- 2025年4月から「4号特例が縮小」され、建築申請の内容などに変更が生じることが決定しました。
- 「新2号建築物」に該当する建物は建築申請時に構造規定等の審査が必要になり、より建物の安全性が向上する反面、費用増加や工期の長期化が起こる可能性があります。
- 建築確認や作成図書の内容を分かりやすく説明し、スムーズに段取りを組んでくれるような、信頼できる住宅会社にお任せすることが大切です。
Contents
そもそも4号特例とは
まず初めに、今回縮小が決定した「4号特例」の概要について理解しておきましょう。
4号特例とは、建築確認申請時に構造規定などの一部の審査が省略できる特例のことです。
次の2つの内容を満たしていれば、4号特例が適用されます。
- 建築士が設計・工事監理を行うこと
- 下表に該当する一般建築物であること
木造 |
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---|---|
非木造 |
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経済成長期に想定以上の住宅が建築され、審査に対応しきれないことから4号特例がつくられたという背景があります。
建築会社側も計算や資料作成のためのコストや時間を削減できるため、スピーディーでコストを抑えた住宅建築が可能になりました。
4号特例の問題点
審査や検査を省略したことにより多くのメリットをもたらしましたが、同時に4号特例の問題点も生じるようになりました。
具体的には、構造に関する計算が部分的に省略されているため、耐震性を確保できていない住宅が建築可能になってしまう点です。
実際に、2005年には耐震強度を偽装した大規模事件が起こりました。
壁量が十分でない建物に対して建築確認が下りて、建築・販売されたという恐ろしい事件です。
事件後には4号特例廃止の動きが見られましたが、建築業界内の混乱や景気低迷を受けて、一旦は無期限延長との結論になっています。
その後も検討が繰り返され、「4号特例縮小」という形で建築基準法が改正され、2025年4月から施行されることになりました。
「4号特例縮小」が2025年4月に施行された理由
4号特例の廃止や縮小が、なぜ今のタイミングで決定になったのか気になる方も多いかもしれません。
2025年4月施行になった背景には、次の2つの理由があります。
- 適切な審査・検査によって建物の倒壊を防ぐため
- 省エネ基準の適合義務化を進めるため
もちろん建物の耐震性を確保して、倒壊を防ぐことも重要な理由です。
それに加えて、省エネ基準の適合義務化も理由の1つに挙げられます。
現行の建築基準法では、4号特例によって建築確認が免除されている建物があるため、省エネ基準に適合しているかの確認ができません。
政府は2050年までにカーボンニュートラル実現を目指しているため、省エネ基準の適合義務化は重要な課題です。
そこで、全建築物が審査を受ける必要がある省エネ法に合わせて、4号特例の内容も見直そうとの動きが出ました。
「4号特例縮小」で大切な3つのポイント
「4号特例縮小」のポイントは次の3つです。
- 4号建築物は廃止で「新2号建築物」と「新3号建築物」ができる
- 「新2号建築物」は確認申請の際に「構造・省エネ関連図書」の提出が必要
- 大規模リフォームで建築確認が必要になる
それぞれ分かりやすく解説します。
参考:建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し|国土交通省
参考:脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について|国土交通省
①4号建築物は廃止で「新2号建築物」と「新3号建築物」ができる
今回の改正によって、これまでの「4号建築物」は廃止されて「新2号建築物」と「新3号建築物」が新設されました。
それぞれの建築物によって、建築確認や審査・検査の必要性が異なります。
廃止・新設される内容を表で確認しましょう。
該当する建物の例 | 内容 | |
---|---|---|
4号建築物 (廃止) |
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新2号建築物 (新設) |
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新3号建築物 (新設) |
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ポイントは次の3つです。
- これまでは木造二階・平屋建ての審査が省略でき、都市計画区域外の建築確認は不要だった
- 2025年4月からは延床面積200㎡以下の平屋建てしか審査を省略できない
- 2025年4月からは都市計画区域外でも木造二階・平屋建て(200㎡以上)を建てる場合は建築確認が必要
新3号建築物は、4号建築物と内容は同じですが、建物の範囲が縮小されました。
新2号建築物が新設されたことで、木造と非木造の構造規定等の審査条件が統一されています。
②確認申請の際に「構造・省エネ関連図書」の提出が必要になる
今回の法改正によって、建築申請の際に提出しなければならない図書が増えることも大きな変更点です。
提出書類 | |
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4号建築物 (改正前) |
確認申請書・図書 (一部図書省略) |
新2号建築物 (改正後) |
確認申請書・図書(構造関係規定等・省エネ関連図書の提出が必要) |
新3号建築物 (改正後) |
確認申請書・図書 (一部図書省略) |
二階建てや平屋建て(延床面積200㎡を超え)の木造建築物が該当する「新2号建築物」では、これまで省略できていた構造関係規定等の図書を提出しなければなりません。
また、省エネ基準の審査対象も新2号建築物が対象になるため、新たに省エネ関連図書も添付する必要があります。
③大規模リフォームで建築確認が必要になる
新2号建築物では、全ての地域への建築・大規模リフォームで建築確認と検査が必要です。
大規模リフォームとは「大規模修繕・模様替え」のことで、主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根又は階段)のいずれか又は複数を1/2以上修繕・改造する工事を指します。
例えば、階段の架け替えや屋根の全面的な張り替え工事などは、2025年4月から建築確認申請の対象です。
これまで4号建築物は大規模修繕・模様替えは建築確認申請が不要でしたので、大きな変更点と言えます。
「4号特例縮小」は新築・リフォームにどのような影響があるのか
今回の4号特例縮小によって、新築やリフォームにはどのような影響をもたらすのでしょうか。
住宅の安全性が向上する
「4号特例縮小」によって、住宅の安全性が向上する点はメリットです。
新2号建築物が新設されたことによって、これまで省略されていた「構造関係規定」の図書提出が条件になります。
構造関係規定とは、構造耐力上主要な部分に使用する材料や技術的基準を定めたものです。
2025年4月以降は、より細かな仕様や安全性を計算した上で、建築確認申請を提出しなければなりません。
そして、第三者機関によって、これまでよりも住宅の耐震・耐力性がしっかりと審査されます。
そのため、「新2号建築物」の新築・リフォームは、これまでと比べて明確な安全性の証明が可能です。
着工までの期間が延びる可能性がある
「新2号建築物」に該当する建物を新築・大規模リフォームする場合、着工までの期間が延びる可能性があります。
建築申請時に提出する図書が増えるため、設計士の検討・資料作成の時間が必要だからです。
また、第三者機関の審査期間も伸びる可能性があり、建築確認が下りるまでに期間を要するかもしれません。
入居の希望時期が決まっている方は、あらかじめ住宅会社に伝えて、ゆとりを持ったスケジュール組みをしてもらいましょう。
価格がさらに高騰する可能性がある
「新2号建築物」に該当する建物を新築・大規模リフォームする場合、工事価格がさらに高騰することも考えられます。
なぜなら、これまで不要だった資料作成や構造計算が必要なため、人件費が上がるからです。
住宅会社によっては、構造計算を外注する場合もありますので、その費用が上乗せされるケースもあります。
さらに、今後は省エネ性を高めた「ZEH」や「GX志向型住宅」などの住まいが増加する可能性が高いです。
これらの住宅は、創エネのために太陽光発電システムを採用することが多いため、建物が重量化します。
屋根からの負荷に耐えられるように、壁量を増やすなどの対応を取ることもあり、耐震性向上ために工事費用がかかることも想定できます。
▷関連コラム:「GX志向型住宅」の基準を分かりやすく解説|最大160万円もらえる補助金の条件も
まとめ
4号特例縮小によって、二階建てと200㎡を超える平屋建ての木造住宅では、建築申請の構造規定等の審査が省略できなくなりました。
より安全性を向上できるなどのメリットがありますが、工期や費用に関する不安点もあります。
「新3号建築物」である200㎡以下の平屋建てであれば、これまでの4号特例と同様の申請で済むため、平屋人気がより高まるかもしれませんね。
建築確認や作成図書の内容についてしっかり説明してくれて、スムーズに建築までの段取りを組んでくれるような、信頼できる住宅会社に家づくりを依頼しましょう。
ハグデザインは、一級建築士によるお住まいになる方の暮らしを考えた提案をしております。
建築基準法改正に関する内容も分かりやすくご説明いたしますので、不安や疑問を少しでもお持ちの方はお気軽にご相談ください。